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Only you……番外編
第17章 病院の外は

余命1ヶ月。その時は刻々と近づき、そしてあっという間に過ぎて行くのだ。僕がどれだけ頑張ろうと、貴正がどれだけ頑張ろうと、人は死に抗うことは出来ない。到底出来ない。

離れたくないし、離れられないと思ってた。それなのに、まさか死が2人を分かつなんて。

風がふわりと流れてきて、貴正の横顔を撫でる。髪がさらさらと揺れ、その寝顔をしかめさせた。白いカーテンが光を反射し、部屋の中はやたらと明るい。

僕は貴正がいつも眺めている窓の外に目をやった。花壇の花たちがゆれ、旗がゆれ、木々の葉がゆれ……。穏やかだった。穏やか過ぎて、僕は涙が出そうになった。

「うぅ……んっ」

軽く寝返りをうち、貴正が唸りながら目を覚ました。眠そうな目で僕を探し、目が合うとにこっと笑った。

「ごめん、寒かった?」

「いんや」

髪を梳いてやると、貴正はくすぐったそうに身をよじった。

「腹減ったぁ~」

貴正がまた文句を言い始めたので、適当に相槌をうちながら体を起こしてやった。冷蔵庫からオレンジを取り出し、皮をむき食べやすく切れ目を入れて皿に盛ってやる。貴正は汚く汁を飛ばしながら食べていた。

「食欲すごいな」

「透真が用意したもの食べないと、勿体無いだろう?」

にっと笑った顔、あと何回見れるのだろう。僕は皿を片付けながら思った。

 コンコン――。

「はぁい」

病室のドアがノックされたので返事をすると、ガチャリと大きく開かれた。

貴正の顔つきが心なしか変わる。僕の前の甘えた雰囲気から、麻都くんに見せる大人の顔に。

麻都くんのVサインに、貴正も緊張が緩んだようだった。連日、口に出さないも心配していたのは見え見えだった。会社にも顔を出せない状況で、後継ぎもいないとなるとおちおち休んでもいられないだろう。

「……!! うっ、ゴホッ」

「貴正!?」

顔色が見る見る青ざめてゆく、そして白く――。僕は背中をさすりながら何度も名前を呼んだ。苦しそうに歪んだ顔は、笑顔にはならなかった。

「行け!」

麻都くんに激を飛ばす。明くんが振り返ったが、やがて2人は部屋から出て行った。僕は背中をさすりつづけた。
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