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第9章 危険な罠

一度人間に不信感を抱いた犬はなかなか人間に心を許さなくなる。
そんなことが書かれたウェブの記事を読み、私の心は少し淀んだ。
聡志が行方不明になってから三年。
私は確実に男性や恋愛に不信感を抱くようになっていた。
まるで自分のことを当て擦られている不快さを感じてその記事を閉じる。

もし聡志と会う前に一仁さんと出逢っていたらすぐに恋に落ちただろう。
何の疑問も抱かず、危険すぎるほど彼に心も身体も委ねていたのだろう。
だけど歴史に『もしも』はない。
私みたいな取るに足りない小さな人間の歴史であろうがそれは同じだ。
聡志が失踪して三年。私は傷が癒えるはおろか、自分の心の殻をより強固なものへと成長させただけだった。

一仁さんのことは、正直言えば好きだ。
信じたいという気持ちも強い。
『だけど』という三文字が必ずそのあとに付いてしまう。