この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
喘ぐなら、彼の腕の中で
第5章 忘れさせて
「沙月。やっぱり体調悪い?」
夜の10時。
銀座の大通りから小道に入った先にある、地下1Fのイタリアン。
雰囲気も良くて料理も絶品。
外見からお店だと分からない隠れ家的で、会社からも程よく離れているから
芹澤さんとのディナーにとても適した場所だった。
「いつもワインは軽く1本あけるのに、今日は進まないね」
視線を上げると、目の前で芹澤さんが優しく微笑んでいた。
……話しかけられていたことに、またしても気付かなかった。
コース料理を食べ終わって、お互いワインを飲んでいるけど
料理の味も、ここまで会話した内容も思い出せない。
「……ごめんなさい」
今日はダメだ、なにもかも。
莉央に中途半端にされた体の疼き
会社を出る時に亜美に言われた言葉
全身に纏わりついて、自分をコントロールすることが出来ない。
……それに……
「いいよ。
終日社内にいるのも、案外疲れるよね」
芹澤さんは普段と変わらない。
私を沙月と呼ぶし、昨日の話がまるで無かったことのように……亜美のことも言わない。
だけど私は、あなたに確認するために今日ここに来たの。
ずっとこの穏やかな時間が続いてほしいけど
………大きく、深く深呼吸をする。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


