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喘ぐなら、彼の腕の中で
第3章 不変と豹変


来客用の応接室は
番号通り1番から始まり、全部で7部屋が並んでいる。

言われた通り、ドアが閉まっている5番の部屋をノックした。


「どうぞ」
「失礼します」


1部屋六畳ほどの、窓のない応接室。
真ん中にある打合せテーブルに……


「あれ?」


誰も座っていないんですけど。
でも、今どうぞって声が……


「ちゃんと伝言が伝わって何より」
「……!」
「ご苦労さん」


開いたドアの後ろから、低い声。

応接室の中に入り、ゆっくりとドアを閉めると
入口すぐ横の壁に体をもたれて、腕を組んだ莉央が立っていた。


「沙月、図面持ってきたの?」

「…… “ 綾瀬 ” です、宮本先輩。
会社では名前で呼ばないでください」

「固いね~相変わらず」

「そんな事より、取引先の人はどうしたのよ」


莉央以外誰もいないどころか、テーブルの上には打合せの形跡すらない。


「取引先なんて来てねぇよ」
「……祭事の打合せで図面を使うんじゃないの?」
「打合せはしていないし、図面なんていらない」


……はぁ?
この男、からかってんの?


「図面がいらないなら、何が必要だったのよ」
「お前」


イライラしながら莉央を睨むと、ピシッと指差された。


「抱いてやるよ、沙月。
薬漬けにして、お前の寂しさを吹き飛ばしてやる」



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