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喘ぐなら、彼の腕の中で
第10章 一発KO


「………!」


ドクンと心臓が鳴って、私は莉央を見つめた。

莉央の視線はまっすぐ亜美に向けられている。


「……幸せアピール?」
「してたでしょ、さっきからずっと」


亜美から笑顔が消えたけど、莉央は構わず続けた。
いつもの口の悪さは封印し、莉央は亜美に合わせて穏やかな口調に変えている。


「芹澤と沙月は仕事上のパートナーだ。
常に一緒なのは当たり前だし、こいつはそこに私情を持ち込んだりしないよ」

「………!」

「俺、こいつと幼なじみなの。
だからあまりイジメないでくれない?
ムカつくんだよね」


……莉央……!

胸が熱くなって、何かが込み上げてくる。

言葉がでない私の横で、亜美が静かに口を開いた。


「……宮本さん、何を言ってるの?
イジメって、誰が誰を…」

「亜美ちゃんが、沙月を」

「え~? そんなことしてないよ~?」

「沙月は、君とは違うんだよ」



莉央は笑顔を消すと、低い声で続けた。



「人に優しい分、傷付きやすいんだ。
それなのに人一倍我慢しちまう」

「………っ」

「強がってるけどすごく弱いから。
頼むから、これ以上泣かせないで」




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