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執事はお嫌いですか?
第6章 主人と執事は翻弄し、進む

3
「斎、湯船浸からなくてよかったの?」
「うん・・・」
俺は濡れた髪にそっとタオルをかけた。
横では、春が欠伸をして着た服を整える。
「少し、のぼせてたから・・・」
「大丈夫?」
「うん」
少し頭を絞ったからなのか、あやふやな視界のまま返事をする。
俺は、ぽかぽかする体に手で仰いで風を送った。
・・・ふらふらする・・・。
お風呂で考えごとするんじゃなかったな・・・。
「ごめん、春。先に俺の部屋行ってて・・・」
「わかった」
春は「待ってるね」と一言残すと脱衣所から出て行った。
俺は、フラっと立ち上がると、そそくさと窓の方寄って夜風に当たり、思い耽った。
もちろん、クロのこと――。
クロの考えや、思い、俺への感情・・・。
最初から読めないとは思っていたし、最近わかってきたことも少しずつだけど増えてきた。
だけど、このタイミングで“欲情”なんて言われたら――。
「ふりだしじゃんか・・・」
ヒュウウ――と冷えた風が吹いて、腕に貼った絆創膏が揺れた。
「防水じゃなかったのか・・・」
溜息をついて、ふやけてしまったのを剥がすと、赤い印が顔を出した。
「ッ・・・・」
今一番見ちゃいけなかったものかも。
俯いて足元を見ると、ふくらはぎの所も、太ももの所も、わき腹の所も――すでにふけやけしまっており、剥がすはめになった。
一枚一枚剥がすごとに、クロとのキスの感触、舌触りを思い出してしまう。
『――いや実は、榊先輩、男子生徒とキスしたらしくて・・・』
キス・・・。
クロにとっては、この印もたかがキスマークなのか・・・?
「あ~・・・!もう、わからん・・・!
というか、こういう時に春の話思い出す俺もわからないな・・・!」
まただ、このモヤモヤする感じ。
タオルでグシャグシャに頭を掻く。
と、ガラガラ――とドアが開く音がした。
「斎・・・」
聞き慣れた声がして、鈍い体で振り返る。
焦った様子のクロが立っていた。
「斎、大丈夫?」
敬語じゃない。
学校の先輩でも、屋敷の執事でもない。
本当に二人っきりの時だけの、ほぐれた話し方――。
「ん・・・大丈夫だ」
なぜか上手く笑えなくて、自分でも考えを引きずっているんだと思った。
当たり前か・・・。
今さっきまで考えてたんだし、クロのこと。
「斎、湯船浸からなくてよかったの?」
「うん・・・」
俺は濡れた髪にそっとタオルをかけた。
横では、春が欠伸をして着た服を整える。
「少し、のぼせてたから・・・」
「大丈夫?」
「うん」
少し頭を絞ったからなのか、あやふやな視界のまま返事をする。
俺は、ぽかぽかする体に手で仰いで風を送った。
・・・ふらふらする・・・。
お風呂で考えごとするんじゃなかったな・・・。
「ごめん、春。先に俺の部屋行ってて・・・」
「わかった」
春は「待ってるね」と一言残すと脱衣所から出て行った。
俺は、フラっと立ち上がると、そそくさと窓の方寄って夜風に当たり、思い耽った。
もちろん、クロのこと――。
クロの考えや、思い、俺への感情・・・。
最初から読めないとは思っていたし、最近わかってきたことも少しずつだけど増えてきた。
だけど、このタイミングで“欲情”なんて言われたら――。
「ふりだしじゃんか・・・」
ヒュウウ――と冷えた風が吹いて、腕に貼った絆創膏が揺れた。
「防水じゃなかったのか・・・」
溜息をついて、ふやけてしまったのを剥がすと、赤い印が顔を出した。
「ッ・・・・」
今一番見ちゃいけなかったものかも。
俯いて足元を見ると、ふくらはぎの所も、太ももの所も、わき腹の所も――すでにふけやけしまっており、剥がすはめになった。
一枚一枚剥がすごとに、クロとのキスの感触、舌触りを思い出してしまう。
『――いや実は、榊先輩、男子生徒とキスしたらしくて・・・』
キス・・・。
クロにとっては、この印もたかがキスマークなのか・・・?
「あ~・・・!もう、わからん・・・!
というか、こういう時に春の話思い出す俺もわからないな・・・!」
まただ、このモヤモヤする感じ。
タオルでグシャグシャに頭を掻く。
と、ガラガラ――とドアが開く音がした。
「斎・・・」
聞き慣れた声がして、鈍い体で振り返る。
焦った様子のクロが立っていた。
「斎、大丈夫?」
敬語じゃない。
学校の先輩でも、屋敷の執事でもない。
本当に二人っきりの時だけの、ほぐれた話し方――。
「ん・・・大丈夫だ」
なぜか上手く笑えなくて、自分でも考えを引きずっているんだと思った。
当たり前か・・・。
今さっきまで考えてたんだし、クロのこと。

