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その、透明な鎖を
第6章 違和感
……そうは思いながらも、あのとき、悠斗はふたりの姿を見ていない。
だからあれは凛の両親だ、っていう確証なんかないのだ、と。
そんな考えも、ぐるぐると頭の中を。
――でも、あのとき呼ばれていたのは凛の名前じゃなかったし。
なら、女の方は凛の母親だろうって思うのは普通だろ?
「……っ、だめだ」
それ以上はもう考えない方がいい、と。
そんなふうに、自分の中の何かが制してくる。
「はあっ」
また、頭を振る。
そして流れ落ちる、汗。
「暑い」
蝉の声が、さっきからやけに大きく頭の中に響く。
悠斗は足を止めて。
「ああ――……」
天を、仰いだ。
「……うるさい」
そう呟いて。
その蝉の声も。
頭に残る凛の姿も。
父親の姿も。
……感じた、ふたりの親しげな雰囲気も。
なんだか、すべてを振り払いたい衝動に駆られて。
彼は大きく、頭を振った――――。

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