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Deep Emotion
第2章 始まりの予感



「やあ、お疲れ様」

次の日。仕事を終えて16時を少し回った頃、ビルを出たところで声を掛けられた。

「門倉社長…」

今日はその後ろに園部さんの姿はなく、代わりに車が停まっていた。

車には全然詳しくないけど、艶々とした黒い車体からは、高そうな感じがにじみ出ている。

「昨日、話が途中だったよね。君も仕事で疲れているだろうから、話は手短に済まそう」

門倉さんはそう言って、私の目を真っ直ぐ見た。




「私の家で、ハウスキーパーをしてほしい」




………はい?

「ハウスキーパー?」

ハウスキーパーって家政婦のことだよね。っていうか、何でいきなりハウスキーパー?

ぽかんとしている私に門倉さんは更に話を続ける。

「仕事が忙しくて、なかなか家のことには手が回らないんだ。だからハウスキーパーを探していた。住むところが無いなら、住み込みでぜひ働いてほしい。給料も仕事に見合った額を出す」

「待ってください。何で私が」

「丁寧な仕事と、仕事への姿勢」

門倉さんが柔らかい表情をする。

「私はそれを評価しただけだ。仕事を丁寧に行うのは当然とは言っても実際は難しい。時間に追われていたり、他の優先順位の高いことに捕らわれていると、仕事は疎かになりがちだからね。挨拶も、相手への慣れや自分が忙しかったりすると同じく疎かになる。君はどちらも丁寧だったから、真面目で好感の持てる人間だと思った。だから君に声を掛けたんだ」
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