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一夜の愛、人との愛
第8章 銀の鎖
「あ・・・」


信じられないと言わんばかりに目を見開き、真理亜が酸素を求める魚のように口を大きく開いた。


浅い呼吸で、うまく息が吸えない。


その間も、体中に熱がめぐり、羞恥心という名の理性に、欲望が噛み付き始める。


(触りたい・・・)


とても認めたくない衝動が、ゾクゾクと湧き上がる。


濡れた右手が、足の付根で下着の境目に食い込む。


「綺麗ですよ、とても」


「んぁ・・・」


男が見ている。その事実が、真理亜の意志を繋ぎ止める。


「見、ないで・・・」


「貴方の肌が、熱くほてっている様子を、ですか?」


冷たい男の声が、真理亜の体に熱を灯していく。


「それとも、濡れた唇を?」


「・・・や」


緩く首を振る真理亜の左手が、無意識に胸元を隠すオレンジのレースにかかる。


「硬くなった胸の先端を、なだめようとする貴方の指先のことでしょうか」


「は、ぁ・・・」


男の言葉が、真理亜の身体に絡みつく。


「また、濡れる」


「ふ、っ・・・」


(触りたい。・・・触って欲しい)


立てたままの右足が横に開いた。


その様子を見ていた男が、獲物を見つけた獣のように目を細めた。




  *  *  *




抵抗の言葉は最初の数十秒だけだった。

真理亜の右手を強引に下着の中へ潜らせた男に、彼女は涙をためた瞳で懇願した。

やめて。だめ。もう無理。と。

その右手は、今、レースの模様をいびつに変えながら、濡れたクリトリスに充てがわれている。





「随分、気持ちよさそうですね。こんなに、溢れている」

「やっ、・・・あ」


男がシーツの上に垂れた透明の愛液を救い、真理亜の唇にスッと塗りつけた。

紅を引くような仕草で彼女の唇を濡らし、

その手をブラジャーのストラップにかけると両肩を剥き出しにする。


「あ・・・」


布地の僅かな動きで、既に敏感になってた先端が痺れる。


その間も、右手を止められず、真理亜は男から顔を逸らす。


自分を拒絶しようとしながらも、解放を望んで震えうねる肢体に、クレイルは興味深げに眉を持ち上げる。


シーツの上に、くしゃくしゃに丸まった濃紺のスカーフが目に入った。





「恥じらいなど、忘れてしまいなさい」





男の声が、優しく真理亜の耳に落ちた。





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