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一夜の愛、人との愛
第16章 気配

隣で糸の切れたマリオネットさながら、くたりと眠っている真理亜を一瞥し、ザレムは息を吐いた。
(馬鹿な女だ)
元の世界に帰れと言っているのに、無理矢理にでも残ろうとして。
眠るべきだと指示してやっているのに、抗って耐えようとする。
素直に言うことを聞けば波風も立たないのに、自分の言葉にだけ反抗してくる。
いくら他人を消滅させたくないからといって、みすみす戻る機会を手放すなんて、正気の沙汰じゃない。
だったら、さっさと目的を遂げて帰してやろうとしているのに、今度は余計なお喋りをしたがってくる。
人間というのは、こんなにも面倒で非効率な生き物だったのだろうか。
自分が守ろうとして、そして守るべきだと信じている生き物は。
うんざりした面持ちで、ザレムは視線を真理亜の顔に向ける。
地下で見た、甘く官能的な表情とは違う。
ただ生理的な欲求に飲み込まれるまま、深い眠りに落ちている顔だ。
安らかにも見えず、穏やかにも見えず、ただひたすら眠っているだけの変哲も無い顔は、あの時、濡れて火照った顔をした女と同じ人物には思えない。
肉体の要求には抗えない癖に、精神だけでも抗ってくる。
『不可思議で、我々天使とは相容れない生物だ』と、過去に書物で見た言葉を思い出す。
なるほど、言葉の通りかもしれない。
(それとも、この女が飛び抜けて厄介なのか…)
思い直してみるも、結局、どちらであっても状況は変わらない。
(馬鹿な女だ)
元の世界に帰れと言っているのに、無理矢理にでも残ろうとして。
眠るべきだと指示してやっているのに、抗って耐えようとする。
素直に言うことを聞けば波風も立たないのに、自分の言葉にだけ反抗してくる。
いくら他人を消滅させたくないからといって、みすみす戻る機会を手放すなんて、正気の沙汰じゃない。
だったら、さっさと目的を遂げて帰してやろうとしているのに、今度は余計なお喋りをしたがってくる。
人間というのは、こんなにも面倒で非効率な生き物だったのだろうか。
自分が守ろうとして、そして守るべきだと信じている生き物は。
うんざりした面持ちで、ザレムは視線を真理亜の顔に向ける。
地下で見た、甘く官能的な表情とは違う。
ただ生理的な欲求に飲み込まれるまま、深い眠りに落ちている顔だ。
安らかにも見えず、穏やかにも見えず、ただひたすら眠っているだけの変哲も無い顔は、あの時、濡れて火照った顔をした女と同じ人物には思えない。
肉体の要求には抗えない癖に、精神だけでも抗ってくる。
『不可思議で、我々天使とは相容れない生物だ』と、過去に書物で見た言葉を思い出す。
なるほど、言葉の通りかもしれない。
(それとも、この女が飛び抜けて厄介なのか…)
思い直してみるも、結局、どちらであっても状況は変わらない。

