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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章
とは言え、
まったく、匠斗はどちらに似たのだろうか?
父の匠海は、ヴィヴィが物心付いた頃から活発で、思いやりのある人間で。
母の瞳子は、……子供の頃の事は知らないが、今は社交性のある人間だと思う。
つまり何が言いたいかというと、
2人の子供ならもっと可愛げがあってもいい、と思うのだが。
釈然としない思いを抱えつつ、紅茶を飲んでいると、
また、瞳子の腕の中の匠斗が、じい~~と、穴が開きそうなほどヴィヴィの顔を見つめていた。
今度はこちらの視線に気付いても、そのまん丸の瞳は反らされる事は無く。
「………………」
30秒ほど、微動だにせず見つめ合っていた両者。
しかし、先に根を上げたのは、21歳のヴィヴィのほうだった。
茶器の残りを飲み干したヴィヴィは、静かに茶の席を辞去し。
何故か とぼとぼとした足取りで、屋敷の裏庭へとやって来た。
小さなビニールハウスの中、
うずくまったヴィヴィは、トマトの苗木の根元を見つめながら凹んでいた。
(可愛い……って、思っちゃった……)
自分の元恋人の子供なのに。
全身全霊を捧げて兄を愛し抜いて、なのに、最悪の形で裏切られて。
その結果としてこの世に授かった、
自分からしたら “一番邪魔な存在” の筈なのに。
なのに、
自分は――。
「………………」
両膝を抱きかかえていた腕が緩み、細い両の掌が苗木の根元の土に這わされ。
少し乾いた表面、でこぼことした土の生々しい感触に、
長い睫毛がふるりと震える。
祖母が丹精込めて育ててくれた、トマトの苗木。
青臭いその生命の匂いに包まれると、いつも安堵を覚える。
生きている。
私は生きて “ここ” にいる。
自分を殺したいと足掻く反面、
未だ、いみじくも生に執着し、
瑞々しく育まれるものに、有らぬ救いを求めて必死に縋り付いている。
その明らかな矛盾に、
時折、自分が解らなくなる。

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