この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章
細い指先を滑らせ、届いたばかりのメールを開封すれば。
Title:オックスフォードに着いた
Letter:
一目でも良いから会いたい。
頼むから、電話に出て。
「~~~っ!?」
驚愕の事実を伝える内容に、大きな瞳が更に大きく真ん丸になる。
(ス……ススス、ストーカーですやんっ!?)
あまりの事に取り乱し過ぎ、思わず関西弁で突っ込んだヴィヴィ。
そうこうしていると、またスマホが振動し始めて。
このまま無視出来る程、冷たい子じゃないヴィヴィは、目の前の防音室の扉を開け。
確実に密閉してから、不承不承 電話に出るしかなかった。
『良かった。出てくれて……』
「………………」
てっきり、第一声で物凄く怒られると思っていたのに。
意外にも匠海の声は、妹の安否を確かめられた事に、心から安堵しているそれに聞こえた。
しかし、
兄が次に発した言葉に、目の前が真っ暗になった。
『今、屋敷の目の前にいる』
「……冗……談……」
くしゃりと前髪を握ったヴィヴィは脱力し、分厚い扉に凭れ掛かった。
確かに、オックスフォード駅からも、バスの停留所からも、この屋敷はそんなに離れてはいないが。
だからと言って、屋敷の目の前から電話を寄越すなんて、
幾らなんでも、脅迫じみていやしないだろうか?
『ヴィクトリア、出て来られないか? 近くでお茶でも飲もう』
お茶?
お茶なんかして、どうしようと言うのだ?
それに匠海との交渉は決裂した。
今更、ヴィヴィには話す事など、何も無い。
「……無理……。悪いけど、もう帰って……」
(そしてお願いだから、もう二度と、私に連絡して来ないで……)
わざわざオックスフォードくんだりまで、多忙な兄に脚を運ばせてしまった事は、
ヴィヴィにも、その責任の一端はあるかもしれない。
けれど、もう匠海には会えなかった。
否――
自分達は “普通の兄妹” として接せられるようになるまでは、
もう会ってはならないのだ。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


