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近くて甘い
第48章 想いは混ざる

手鏡でピョンっと跳ねたしつこい寝癖を仕切りに抑える。
ダメだっ…どうにもならないっ…
涙目になりながら、加奈子は根気良く髪の毛を手で押し付けていた。
直さないとまたからかわれちゃう…っ
今日こそ出来る女だっていうアピールをしたいのに!
刻々と始業時間が近付く…
せっかく間に合ったというのにもう10分もクッキーを持ったまま副社長室の前で立ち往生をしている。
「あーもう、やだやだ!!」
大きくため息をついたそのとき、目の前の扉の開いた音が響いた。
へっ…
「これは…失礼…」
目を丸くする要に、加奈子はギャッと声を出して背筋を伸ばした。
プッと吹き出した要は、勢いよく跳ね上がった加奈子の寝癖を見て、手を伸ばした。
「今日もまた随分…」
「っ……」
「いい髪型だね」
目を見開いた加奈子は、少しムッとしながら、持っていたクッキーを要に押し付けた。
そうやっていつもからかってくるんだからっ…
そして悔しいのは、そんな要の笑顔に一々ドキドキしてしまうことだ…

