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第4章 蛇蝎の槽

女の横でマリーもコートを脱ぐ。
マリーは黒のボンデージでシルバーのラインやスタッドが入りシャープで攻撃的な印象だ。
モデルのようにゆっくりと背を向け肩ごしに観客にウインクをすると、また歓声があがる。　スポットライトにマリーの背中で美しいエンジェルのタトゥーが浮かび上がっていた。

「さあ、始めるわよ……」
ピシャリ、とマリーのムチが床を打つ。
それを合図にステージ後方の竿師達が動き出す。
舞台の中央にX型の赤い磔台が引き出され、一人の竿師が生贄のように連れてこられて、それへ拘束される。　その男はマスクで表情は見えないが、まるで処刑でもされるかのように怯えているようにも見えた。

マリーは今日のヒロインの背後にまわり、仮面に手をかけるとゆっくりとそれを外していった。

「ミユキさん、しっかりね……」
耳元で囁く声は優しく甘い……、だが、安代美雪には命令の合図でしかなかった。　いくら指導されていても、とうてい耐えられないほどの苦行が始まるのだから。