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コンプレックス
第3章 弟の会社
渚オススメのパスタが運ばれてくる。

オシャレに盛り付けられたパスタよりも、その隣に付けられたコーンスープに目が留まる翔。


(愛里咲ちゃんのスープ、美味しいんだよな…)

翔が帰宅する頃に出来上がる愛里咲の料理。
母親の作り置きを食べていた今までとは全然違い、鍋から装われ湯気が上がる料理全てが美味しく感じる。

そして、いつも翔の前の席に座りニコニコと話を聞いてくれる愛里咲に、翔の心は毎日癒されていた。



「ついに明後日ですね! 取引先の人…いい人だといいなぁ」

ぼんやりと愛里咲の事を考えていた翔は、渚の声にハッと我に返った。

琉の会社の子会社との取引。
その日は明後日に迫っていた。


「でも、若い女子社員連れて来いって…ちょっと心配じゃない?」

セクハラ親父を思わせるそのセリフに、翔は今だに好印象が持てない。

「ふふっ、夏川さん、私の心配してくれるんですか? 嬉しいな」

クルクルと器用にパスタを巻き付けながら、渚が嬉しそうに笑う。


トクン…
小さく跳ねた心臓に、翔自身が驚いて目を見開いた。

(な、何だよ…何ときめいてんだ、俺)

誤魔化すように、翔はパスタを掻き込んだ。

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