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助教 沙霧
第9章 秘密のいとなみ ~自宅の浴室~
 帰宅した沙霧を待っていたのは、しんと静まり返った闇と、自分が送りつけたあのメッセージへの、取り返しのつかない後悔だった。

 バッグを放り出し、明かりも点けずにリビングの床に座り込む。スマートフォンの青白い光が、彼女の強張った表情を冷たく浮かび上がらせていた。誉からの返信はまだない。だが、送信済みのフォルダに残る「引きちぎってくれる誰かを待ち望んでいる」という言葉が、まるで毒液のように彼女の自尊心を侵食していく。
 
(……何を、書いてしまったの)
 
 自分の声が、見知らぬ女のもののように低く、湿って響いた。

 逃げ場を求めるように、沙霧は浴室へと向かった。服を脱ぎ捨て、全裸でタイル張りの洗い場に立つ。鏡の中に映る自分の姿は、昼間の厳格な研究者とは程遠い、秘めた欲望を隠しきれなくなっている「女」だった。

 短く切り揃えられた黒髪は、湿気を吸ってうなじに張り付き、その白く細い首筋が、どこか供物に捧げられる仔羊のような危うさを湛えている。対照的に、豊かな胸は呼吸を繰り返すたびに重たげに揺れ、その先端は、浴室の冷気に触れて既に硬い突起となっていた。
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