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防音室で先輩に襲われて…
第5章 防音室で先輩に襲われて

「──…じゃあ始めるよ」

「……っ」

 そして乃ノ花は単純な罠に陥っていた。

 椎名は、彼女が勝つ条件として " 堪える " という言葉を使ったのだ。

 それは明らかな詭弁(キベン)である。

 彼女が " 堪える " 必要などない。げんに両手の自由がなかろうと、身体をよじらすなり、足を使うなりの抵抗はいくらでもある。彼女は " 逃げる " べきなのだ。

 しかし罠にかかった憐れな彼女は身を強張らせ…触れてくる男の指にただ怯えるだけ。

 満員電車で痴漢される女みたいに、大人しく堪えてしまっている。

「…ッ…ぅ」

 何度か頭を撫でられて…耳の後ろをツーっとなぞられる。

 …ビクッ

 それから首筋…
 今度は背中

 彼女の輪郭をたどるように、指の感触が移動する。

(嫌だ……怖い、何をされるの?先輩は何をする気なの……!?わたしが口から手を離しちゃうくらい痛い事されるの?怖い……!)

 考えれば考えるほど力む(リキム)身体。大きくなる震えを誤魔化そうと、ぎゅっと強く口を押さえる。

 背中のラインをたどった指がセーラー服の隙間から内側にはいったことにも、すぐには気付かなかった。

 サワ.....

「…ッ…?」

 ピクン、と身体が反応する。

 その頃にはすでに彼の手は脇腹を通り過ぎ──下着の上から胸の膨らみに触れていた。

「んむ…!」

 叫んだ声は掌にフタをされてくぐもった。

「こらこら駄目だ、暴れないで」

「…!?」

「大事な機材が壊れるよ?俺からすればどうでもいいが…君には大切な物だろう?それに万一、変なボタンを押したりしたら校内放送が始まるかもしれないよ」

「ん…!(そんな…っ)」

 乃ノ花が座らされているのは放送機材が置かれた台だ。もし身体を後ろに傾ければ、どんなボタンを作動させてしまうかわからない。



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