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あなたに抱かれたい
第1章 新入社員
とんだお荷物を背負い込んだと拓哉は思った。
美人ゆえに、どうせお嬢様気分で仕事など覚える気もなく、すぐに退職してしまうに違いないと思っていた。
だが彼女に対して、その第一印象はすぐさま撤回させられる。
何よりも久美子は能力の優れた女であった。
プレゼン用のPowerPointで資料の作成を依頼すると、何年も働いている男性社員よりも手際よくデータを作り上げるし、営業に補佐として同行させても頭の回転の良さで相手先に好印象を与えてくれた。
こうなると信頼関係が生まれてくる。
新規開拓のための地方営業の出張に拓哉は迷わず彼女をパートナーと選び一緒に出張に出掛けることにした。
美人を同行させると、さすがに相手方へ好印象を抱かせるようで、思いの外、交渉が次々とまとまった。
街角の定食屋で夕食を済ませ、今日一日の褒美として久美子に旨い酒でもご馳走しようと思った。
「君、お酒は好きかい?」
「嗜む程度ですが…」
「それでも呑めるんだろ?どうだい、軽く一杯付き合わないかい?」
「そうですね…では、ご相伴に甘えさせていただきます」
大都会ではないので洒落た店はないけれど、
それでもワンショットバーを検索してなるべく小綺麗な店を選んで彼女を招待した。
「今日はお疲れ」
「いえ、係長こそお疲れさまでした」
チン!と二人はカクテルグラスを合わせて軽やかな音を立てて乾杯した。
久美子には口当たりの良いピーチフィズを、そして、自分はジンフィズで喉を潤した。
あまりお酒には強くないのか、最初の一杯で久美子は頬を染めた。そして、酔うと美しい顔に妖艶さが加わりなんともいえぬいい女の顔をした。
「こうして部下の女と酒を酌み交わしていることを奥さまに知られたら怒られちゃいますわよ」
どうやら拓哉の左手の薬指のリングに気づいたのか、久美子はさりげなくそう言った。
「えっ?ああ、これ?未練たらしいよね、亡くした妻を思っていつまでもリングをしているんだから」
「えっ?亡くなったって…?」
「もう妻を亡くして10年になるかな…子供たちが成人するまでは恋愛などしないって誓いを立てて既婚者を装っている」
「シングルパパなのね…」
酔いのせいか、拓哉は自分から過去の事を久美子に聞いてほしくなった。

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