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華のしずく~あなた色に染められて~
第22章 其の壱~飛花~
その噂は、京より離れた青龍の国にまで届いていた。帰蝶は良人秀継の一日も早い帰還を願い、無事なその姿を眼にすることだけを祈った。もとより養父秀吉の影にあって、いつも目立たない秀継である。いや、当の秀継自身が殊更秀吉より目立つことのなきよう心がけているから、余計にその存在感が薄くなってしまうのだ。
教養もあるのに、何ゆえそこまで控えめにふるまうのかと訝しむ帰蝶は、いつだったか良人にその理由(わけ)を訊ねたことがある。