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第3章 【華のしずく】～夏雷～

　この後、信成はほどなく珠々の言を取り入れて、家臣たちに温泉入浴を勧める命を出した。信成の領するこの国には古来より温泉が多い。これ以後、領主の薦めともあって、武士だけでなく領民の多くが温泉で湯治するようになった。そして、その薬効は大きく、人々は信成を情に厚い領主だと尊崇の念を大きくしたのである。
「それに」
　信成は笑いを含んだ声で珠々の耳元で囁いた。信成が上機嫌のときの彼特有の人を揶揄するような物言いである。