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第3章 【華のしずく】～夏雷～

　敗走してからというもの、信成は数人の家臣たちと共に敵軍の眼を欺きながら逃げ続けた。途中、敵をごまかすために、四人いた家臣は二手に分かれ、二人だけが信成に付き従い、あと一方の二人は囮となり故意に追っ手の眼につくように行動した。そのために、信成は厳しい追捕の手を逃れ得たのだ。後に、囮となった若き家臣二人はやはり敵の刃にかかって亡くなったと判明した。信成はその者の年老いた父母や妻子に手厚い恩賞を与えた。