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第3章 誘惑しますっ！

　◆



　7月20日。
　さあ、この日がとうとうやって来た。
　あたしの家から3つ目の駅がここ、唯斗さんのお家。
　電車の本数は少なくて、静かで小さな駅。
　唯斗さん家から駅まで歩くと30分弱かかるらしい。
　唯斗さんには家を出たら連絡をするよう言われているけど……。
　道順はあらかじめお父さんから聞いているし、15分ほど歩けばバス停があるらしい。
　携帯でも位置情報という心強い味方もある。
　――と、いうことで、唯斗さんを驚かせたくて家まで突撃しちゃおう！

　その前に、ちょっとお手洗いで下準備。
　唯斗さんを誘惑するんだから、それなりの格好にならないと。
　ということで、今日の服装は丸い肩を強調させる開いたシャツ。
　なのでブラはしていない。上にカーディガンを羽織るから唯斗さん以外には見えないし、大丈夫。
　ミニスカートの中はレース型の紐ショーツ。
　これでばっちり決まりでしょう！！


　なんて歩いていると、枝分かれした小径とか水路とか、なかなか田舎っぽい静かな街並み。
　たまに行き交う人もゆったり歩いていたり、たまにふわふわ蝶々が飛んでいる。
　田んぼがところどころ見られる地域。

　可愛い揚羽蝶に魅入ってしまってついつい道を逸れてしまった。
　それがいけなかったんだ。
　おかげでバス停もわからなくなっちゃうし。
　暑いし、汗もでてくるしっ！
　せっかくばっちり仕上げたメイクも落ちちゃうじゃない！
　持ってきたキャリーケースは重いわだしっ！
　これじゃあ唯斗さんを誘惑するシナリオが台無し！
　もう最悪！！