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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第9章 なつめと大根。
しばらく静かな空間の中にいると、唯斗さんはいつの間に着替えたのか。
Tシャツにジーンズ姿で下りてきた。
「澪ちゃん、俺は今から少し出かけるけれど、留守番できる?」
「はい、大丈夫です。痛み止めのお薬も飲んだし、このままじっとしていればなんとかなるので。いってらっしゃい」
……本当は、朝食も唯斗さんと一緒に過ごしたかったけれど、唯斗さんは今日もお仕事だし、それに、ご飯も作り損ねたし。
きっとコンビニでご飯を買って来るんだろう。
あたしはいってらっしゃいを言うと、唯斗さんはひとつ頷いて家を出た。
――――。
――――――――。
「ただいま、この近くに24時間スーパーがあって助かったよ」
しばらくして、唯斗さんが真っ白なビニール袋を持って戻って来た。
「調子はどう?」
訊ねられて、あたしはにっこり笑う。
「少し楽になりました」
嘘。
唯斗さんを安心させたくて、つい嘘をついちゃった。
生理初日はいつも丸1日中鈍い痛みと戦わなきゃいけない。
だから本当はまだずっと辛かったりする。
「澪ちゃん、嘘はいけないよ、少し待っていて」
「?」
待つ?
いったい何をするんだろう?
キッチンに立った唯斗さん。
もしかして唯斗さんは自分の朝食の買い出しじゃなくて、あたしの体調に合う食材を買いに行ってくれていたの?
自分のことをそっちのけで?
起き抜けでお腹、空いているのに?
「――っつ」
とくん、とくん。
あたしの胸が鼓動する。
胸の鼓動を抑えられないまま、キッチンに立つ唯斗さんを目で追う。
まな板と包丁を取り出しているのが見えた。
さすがは唯斗さん、大根の桂剥きもお上手です。
お料理ができる男の人ってきっとモテるんだろうな……。
あたしの恋敵、とっても多そうです。

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