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僕の母さん
第11章 それぞれの姫始め

「ははは…達郎くんに嫌われちゃったかな」

バツが悪くて、辰巳はポリポリと頭を掻いた。

「ゆっくりと順を追ってあの子に言い聞かせるつもりだったのに…
あんまり事を急かさないで」

真弓としては、何がなんでも達郎に辰巳との仲を認めてもらおうと急がずのんびりと納得させるつもりだった。

「なんだい、君たちデキていたのかい?」

場を和ませようと、わざとのんびりした口調で真壁が驚いたよと茶化すようなポーズを取った。

「デキてるも何も、僕は真弓を嫁に迎えるつもりですよ」

「えっ!?嫁にって…じゃあ、あなた達結婚するの?」

佐智子が本当なの?と真弓の顔を覗き込む。

「ええ、実は…その通りよ…」

真弓はこの時とばかりに、隠していたダイヤの指輪を左の薬指にハメて佐智子と真壁に見せつけた。

「こりゃあ、先を越されたなあ…」

先を越された…つまり、それは真壁も佐智子に求婚するつもりなのだと何気なく告げているのに等しかった。

「えっ?それって…」

佐智子はちゃんとしたプロポーズを受けていないのに、
すっかりその気になって嬉し涙を流した。

部屋を飛び出した達郎は、かなり立腹していた。

「そんなに怒らなくてもいいじゃない
真弓おばさまだって妙齢の熟女よ
浮いた話の一つや二つあってもいいじゃない」

「相手が問題だろ!
あいつ、歳はいくつだと思う?
俺の兄貴と言っても可笑しくない年齢だぜ?
そんなやつに母親を取られる気持ち、君にはわからないだろうね!」

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