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騎士団長は恋に溺れてはいけない──それでも君を抱きしめた夜
第1章 この想いは、ただの憧れ
それからというもの、セラはやたら俺に話しかけてくるようになった。

「団長。好きな食べ物って何ですか?」

「……ローストビーフかな」

「いいですね!」

些細なことでも嬉しそうに笑う。

まるで、俺の言葉ひとつひとつに花が咲くような、そんな表情だった。

「団長は、お休みの日って何してるんですか?」

「……特にないな。剣を研いでるか、文献でも読んでるか」

「真面目なんですね……ふふっ」

俺の返答に、くすっと笑う声。

その声がなぜか、心の奥をくすぐった。

次第に気づく。

稽古のあとも、食堂でも、彼女の視線はいつも俺を追っている。

別に不快ではない。

だが、妙に落ち着かない。
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