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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第7章 清めの水

 巫女姫が意識を取り戻した時、彼女は鬼の膝の上に抱えられていた。

「‥ッ‥‥?」

「……」

 その状況を受け止めた巫女は、懸命に身体の震えをこらえた。

 力が抜けた身体は人形のようにぐったりと彼の腕に預けられている。裸の肌に触れる鬼の体温は異様に冷たく、…それは人在らざる存在の証(アカシ)として、彼女の心をざわめかせた。

 薄く目を開けて蔀戸(シトミド)を見れば、外は変わらず夜の闇に包まれている。

 だが、部屋に灯された燭台の火はいつもより明るく、揺らめく炎が彼女の白い肌を照らし、影を濃く刻んでいた。

「──…」

 鬼は無言で彼女を抱き、腕を持って、治りかけの傷跡を指でゆっくりと撫でている。

 モノノ怪の爪に裂かれた腕の傷は、この " 境界 " という場所の特質なのか、はたまた鬼の力によってか、すでに薄い線となって癒えつつあった。

 ツツ………

 彼の長い指がその痕をなぞるたび、巫女の身体は小さく震える。

 それを知ってか知らずか…鬼は戯れに指を動かし、肌の上を滑らせた。


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