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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第22章 輪廻


 風をまとい鬼のもとへ降り立つ。

 小さな裸足が地面にそっと触れた。


「わたしは………?」


 巫女は真っ直ぐ鬼を見つめ、小首を傾げて言った。


「どうして……まだ生きているのでしょう……?」


 鬼の心境などつゆ知らず、彼女の声は無垢で穏やかだ。

 鬼は彼女のもとへ歩み寄り、両手でそっと触れた。

 生成色の髪に指を通し、頬に触れる。


「……」

「あのっ…すみません。わたし、何がどうなっているのか検討が…」


 巫女本人も戸惑っている様子だが、すべてを察した鬼は何も教えてやろうとしない。

 ただ彼女の存在を噛みしめようと…触れた指を滑らせた。

 体温が戻った彼女の頬は柔らかく、温かい。

 巫女は長い睫毛をパチパチと瞬かせ鬼の顔を見上げていた。



「あの……?」


「……」


「もしかして、泣いて」


「黙れっ…」


「……っ」



 ギュッ.....!



 鬼は身を屈め、巫女を抱き締めた。



「今の俺の顔を見ることは……誰であろうと許さぬ……!」



 銀色の髪に隠された裏で、鬼は唸るように言った。

 彼の声は少し苦しそうに聞こえる。

 抱きつかれた巫女は、置き場のない両腕を相手の肩に回した。

 九つの尾が、まるで彼を守るようにそっと巻きつき、柔らかで温かな光を放つ。

 そして──…幸せそうに目尻を緩め、巫女は微笑んだ。













 ───…







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