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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第17章 込み上げる想い

 鏡から現れた巫女は目を閉じたまま、ぐったりと弱っていた…。

 彼女の裸の身体は、池の冷たい水に濡れ、肌には水滴が無数に光る。長い黒髪は濡れて絡まり、肩や胸に張り付き、墨を流したように乱れている。

 震える華奢な肩──。
 細い腰と太腿。

 鬼は彼女を腕の中に引き寄せ、濡れた肌の冷たさに一瞬眉をひそめた。

 巫女の息はか細く、糸のように弱々しい。鬼は彼女の黒髪をかき分け、白くなった頬に指を添えた。

 冷たい肌に触れると、わずかな温もりが戻り始めた。

「……おい」

 声をかけるが、巫女からの返事はない。彼女の瞼は固く閉じられ、反応がない。

「……おい、聞こえるか」

 鬼の声は低く静かだった。

「俺の呼びかけに答えぬか。あいも変わらず、お前はっ……」

 しかし語尾が少しずつ荒くなり、苛立ちが宿る。

 もしや、このまま──。

「このまま死ぬのか?」

「‥‥‥‥‥‥」

 返事はない。

 鬼は顔を近づけ、彼女のまつ毛が彼の吐息で微かに震えるのを見た。今にも息が止まりそうな唇が少しだけ開き、いつもは桃色に輝くそれが、今は青白く血の気を失っている。



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