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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第15章 罪深きおこない


「はぁっ……はぁっ……はぁっ……!」


(今のは、結界…!?)

 ふらりと倒れた巫女を捨て、侍たちが領主のもとに駆け寄る。

「どうされましたかお館さま!」

「うっ…こ、これは…!?」

 床でのたうち回る領主の下半身は、無惨にも焼け焦げていた。

 侍たちは顔をしかめ、恐怖に目を見開く。

 巫女を犯そうとした領主に対し、鬼王が彼女にかけた術が発動したのだ。彼女に張られた結界が、領主の欲棒を焼き尽くした。

 すかさず巫女は、乱れた麻の衣を整え、よろめきながら部屋の外へ出る。

「に、逃がすな!!」

 倒れた領主が、血走った目で彼女を指さして叫ぶ。

「巫女を逃がすな! 殺せ! 今すぐ切り捨てろ!」

 騒ぎに駆けつけた侍たちが、領主の命令を聞き、刀を抜いて巫女を追った。

 彼女は寝殿の廊下を走り、渡殿(ワタリドノ)を抜けて庭園へと向かった。


「はぁっ…はぁっ…!」

「止まれ!」

「あっ…!」


 グラッ....


 侍の声が背後で響き、彼女の衣の裾を掴む。

 バランスを崩した巫女は、橋の手すりを越え、庭園の池へと落ちていった。

 庭園の池は冬の寒さで氷の膜が張っていた。

 巫女の身体が水面を割り、冷たい水が彼女を包み込む。

 侍に掴まれた衣は脱げ、裸となった巫女は、池の底へと静かに沈んでいった──。



 月夜の庭園は、静かで冷たい美しさを湛えていた。

 池の水面には、満月が鏡のように映り、彼女が落ちたことで揺れる水紋が……銀色の光を散らす。

 池の周囲には、苔むした石灯籠が月光に照らされて影を落とす。そして遠くの松の木々が風にそよぐ音が、まるで幽霊の囁きのように響いていた。







 ───…






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