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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第15章 罪深きおこない

「おぬしっ……! わざわざこの場に斬られに来たか? 生意気な口をききおって!」
領主の怒声が宮中に響き、腰の刀を抜く鋭い音が鳴った。
刀身が冷たく光り、目の前の巫女を捕らえる。だが彼女は動じず、静かに両手をついて、再び頭を下げた。
「わたしの他に、ご領主さまに進言する者が只のひとりもいないとすれば」
覚悟など……とうにできているのだ。
「この小さき命も、人々のお役に立てたと願いましょう」
「……!」
その清廉な言葉に、領主の目が一瞬揺れる。
巫女の声は、どこまでも濁りがない。まるで神の光を宿したようなその清らかさは、相対する者に恐れさえ抱かせる。
「くえない女だ。これだからっ…神職の人間は気味が悪い」
領主は苦々しげに呟き、刀を握る手に力を込めた。
「せっかくモノノ怪の指示通り、" 人喰い鬼 " の噂で邪魔な法師や祈祷師どもを蓬霊山(ホウレイヤマ)へやったというに」
「……? どういうことでございましょう」
巫女の声に、警戒が滲んだ。
おっ、と口を滑らせた領主は、気味の悪い笑みを浮かべ、彼女をじろりと見据えた。
「おぬしには関係の無いコトよ」
「まさかこの反乱を、裏で指揮するモノノ怪がいるのですか?」
「……ふっ」
領主の笑みが深まり、嫌な予感が巫女の胸を締め付けた。
反乱の首謀者がモノノ怪?
いや、それどころか……!
「反乱だけでなく、この天災さえもっ……そのモノノ怪が関係してのコトなのですか? 国を混乱させ、戦を有利に進めるために」
「どうであろうな」
領主の余裕ある反応は、認めたも同然だった。

