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恋人岬には噂があった
第1章 第1話
 野上は娘の言いなりだった。この家を買ったときから、自宅の二階は由香が占領していた。しかし家庭内の役割分担は、そのときに話し合って決めている。以来、野上は自分の部屋と家の周りの掃除係で、家事は由香が取り仕切っていた。
 今夜の野上はビンテージ風の灰色のズボンをはき、襟のついた黒い半袖シャツを着ていた。この服装もそうだが、服のほとんどは由香が選んだ物だ。以前由香が免許を取得して車を買うときなど、その刈り上げヘアーには、なにを着てもよく似合うよね、とよく言われたことである。
 そんな娘からの指示で、これから向かう丸岡スーパーマーケットは、神奈川県西部の潮崎町の中心地に建っている。店舗の規模は大型店ほどではないのだが、買い物客はいつも多く、この近郊では人気店のひとつに数えられていた。
 野上がスーパーに着いたとき、七時を過ぎていた。この時刻でも、駐車場には数多くの車が停まっていた。
 車から降りると、周りの車の屋根に駐車場の光が反射していた。野上は夜空を見上げ、ひと雨くれば涼しくなるのだが、とそんな光景を巡らせ駐車場を後にした。
 スーパーの自動ドアが開いたとき、この店のコマーシャルソングが聞こえて来た。買い物客が惣菜売り場に集まっている。ときおり見かける中年の男性店員が、半額のシールを惣菜のパッケージに貼っているのだろう。まもなく、本日最後の特売のアナウンスが始まるのだ。
(──頼まれた物はこの後でも買える。まずは晩酌の肴だ)
 野上は買い物かごを手にすると、足早に惣菜売り場へむかった。そのとき、男の声で特売のアナウンスが始まった。
 婦人客のすき間をぬうようにして、野上は惣菜売り場の前までいった。品定めして、目指すカキフライのパッケージに手を伸ばしたときだった。同時に右隣からも、同じカキフライに手を出す女性がいた。だが、野上の指がちょっと早かった。
 買い物客が周りにいる中で、手を出した女性も気づいたようである。二人は顔を見合わせている。
 野上はそのとき、彼女の強気な眼差しに魅力を感じた。彼女のくっきりした眉毛とまつ毛が、そう思わせたかもしれない。ただ、どこかで見たことのある眼差しだな、とも思えた。考えていると、彼女の口もとに笑みがこぼれ、唇のすき間に透きとおるような白い歯が覗いた。
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