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天狐あやかし秘譚
第51章 堅忍不撓(けんにんふとう)
☆☆☆

「それに、離婚しなくて済みそうだ」
島本は嬉しそうに言った。

ああ、いけない。つい、霧島を捕まえたときのことを思い出していた。まあ、万が一にも術者が霧島だけではない可能性もあったので、確かめる必要があったが、その心配は杞憂だったようだ。

だけど・・・。
『離婚しないで済む』という言葉。その言葉に、一瞬だけ・・・本当にほんのかすかに、『もし離婚したら、私と・・・』と思いそうになってしまい、雑念を振り払うように、頭を振る。そんなこと、ありえないのに。

一瞬の私の動揺に気づくことはなかったようだ。島本はグラスを舐めながら話を続けていた。

「そもそも、妻が急に俺が浮気をしている、って疑ってきて、そんな事実はないって何度言っても信じてくれなくて、それである日、急に子ども達を連れて家を出ていって・・・ってなってたんだ。だけど、そう、あの同窓会の後あたりかな、急に『私の勘違いだった』とか言って、家に戻ってきたんだ。一体アレは何だったんだろうって・・・意味はわからんかったけど、今は普通に生活できてるよ」

そりゃそうでしょう。文字通り憑き物が落ちた、んですからね。

あの事件の後、霧島の身柄は地元県警を通じて京都支所に移送された。そこで彼女は全ての管狐を没収され、今は検察に送致されている。来月には審判に入るらしい。

警察及び陰陽寮の職員が行った供述の結果の一部を私も聞いた。彼女が話した動機は、極めて自己中心的なものだったのだ

高校時代、霧島は島本と付き合い始めたが、彼女の高飛車な性格に島本の方が音を上げたらしい。そもそも霧島が島本を選んだのも、単に見た目がいい男を連れて歩きたかったから、ということだったらしいので、振られて当然だ。

にも関わらず、自分の美貌に自信があった霧島としては、島本に振られたのがショックだったようで、そのあと、何か悪いことがあると度にそれを思い出し、『あの時あいつが私を振らなければ』という理不尽な怒りを島本に対して募らせたという。

そして、就職した会社を人間関係でクビになり、やっとのことで立ち上げた輸入雑貨の店の経営が難航していた時、たまたま家族連れで街を歩いていた島本を見つけたようだった。

自分はまだ独身で、こんなに苦労しているのに、あいつは・・・。
島本の幸せそうな様子に、霧島の怒りは爆発したという。
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