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天狐あやかし秘譚
第51章 堅忍不撓(けんにんふとう)
☆☆☆

「あなたが、術者だったんですね」
同窓会が終了し、会場からは三々五々、人がはけていく。ある人たちは昔話が尽きないのか、グループを作ってホテルのエントランスに溜まって二次会の相談をしていた。

そんな中、私は会場から少し離れた休憩スペースで『術者』を前にしていた。
「なんのこと?」

しらばっくれるのでしょうか・・・。
面倒くさい・・・。

はあ、と吐息が漏れる。
しょうがない・・・。説明するの、面倒なんですけどね。

「さきほど、ネズミが出たと騒ぎがあったとき・・・
 会場にいる全員が声のした方を向きました。
 当たり前です。
 食べ物もある会場にネズミなんか出たら不衛生ですし、嫌ですからね。確かめようとするはずです。
 ただ、あなただけは違った・・・」

会場でただひとり、『ネズミ!』と声が上がった瞬間、島本の方を見た人間・・・。
「あなたはとっさに管狐が発見されたと思った。だから、あなただけは島本の方を見たんです」

たったひとりだけの不自然な動き。
それで術者が・・・あなただと分かったんです。

「霧島、遼子さん・・・」

私の目の前、そこには、ぎょっとして怯えた目を向けている、赤いドレスの女、霧島遼子が立っていた。

私は懐から呪符を取り出した。呪力を収束させる作用のある紋様『ドーマン』とそれを制御するための呪言『識神荒御魂』と書かれた札だ。人差し指と中指の間に挟むと、呪言を唱える。札はみるみる私の式神『野づ霊』(のづち)に変化していった。

霧島の顔が引きつる。
もう、隠しようもないでしょう・・・。

「やはり、見えていらっしゃるようですね・・・」
野づ霊が彼女の足元に這い寄り、鎌首をあげた
「あなたが島本にしたこと・・・私は、許す気はないですよ?」
野づ霊がその身を一瞬しならせ、宙に飛び上がった。
「ひぃ!」
霧島は大きく後退り、イヤリングに右手をかけた。

「く・・・管狐!」
イヤリングの4本の棒、その一本一本から黒い何かが飛び出してくる。その内の一体が私の野づ霊を空中で撃ち落とした。野づ霊は地面でグネリと一旦身体をくねらせると、再び鎌首を持ち上げ、ギンと霧島を見据えた。

霧島の放った黒い影は、彼女の周囲でわだかまり、たちまち四匹の管狐と化した。

「おやおや・・・随分たくさんの狐を飼いならしていらっしゃるようだ」
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