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天狐あやかし秘譚
第44章 捲土重来(けんどちょうらい)

☆☆☆
違和感を覚えた。
虫に乗って移動していた奴らが、空中から森に降り立つところまでは見えた。今、俺の右上には、浮遊しつつ敵を追う天狐の姿、左後ろにはピッタリと瀬良がついてきてるのを感じている。
しかし、奴らの気配は全く感じられない。
これが違和感の正体だ。
「止まれ、天狐はん」
立ち止まり、天狐に声を掛ける。あの狐はものすごい強いのだが、チーム戦には全く向かない。早めに指示を通しておかないと、独走しかねない。
「どうなさいました土御門様」
「気配がない・・・多分、隠形(おんぎょう)や」
自らの気配を何らかの方法で消して潜む術は総称して『隠形』と呼ばれる。高等な術になると直接視認することすら妨げることもできる。敵があの大鹿島の結界を抜けられるわけがない以上、隠形術を用いてそのあたりに潜んでいると考えるのが妥当だろう。
そうなると、罠を張っている可能性が高い。
俺の警戒心が伝わったのか、瀬良も周囲を伺い、警戒態勢を取る。天狐はゆっくりと降り立ち、綾音を地面に立たせていた。
疱瘡神の気配もないところを見ると、人に戻っているのかもしれない。どんなに高度な術式であっても、神の気配を完全に消し切る隠形結界を張るのは、無理とは言わないが、時間が足りなさすぎだろう。
ただ、相手は神宝の使い手である。万が一ということも有りうる。警戒するに越したことはないな・・・。
「罠があるかもしれん・・・注意して進めやな」
俺は五芒が描かれた符を一枚取り出すと、二つ折りにして口に咥えた。そのまま青龍勧請の呪言を唱える。
「前五 青竜 木神 家在 寅主銭財 慶賀吉将」
符が輝き、青龍と化す。もちろん、ある程度の呪力がある人間にしか、その姿を見ることはできない。符から生まれた半透明の猛き龍が天に立ち昇っていく。
先ほど疱瘡神を連れた鉄研を追いかけさせたのもこの青龍だ。
今日は、青龍、大活躍やな・・・。
青龍はその性は木であり、このような森の中ではより一層力を発揮することができる。
「さあ・・・かくれんぼは・・・そっちにとって悪手やってこと教えたるわ・・・」
違和感を覚えた。
虫に乗って移動していた奴らが、空中から森に降り立つところまでは見えた。今、俺の右上には、浮遊しつつ敵を追う天狐の姿、左後ろにはピッタリと瀬良がついてきてるのを感じている。
しかし、奴らの気配は全く感じられない。
これが違和感の正体だ。
「止まれ、天狐はん」
立ち止まり、天狐に声を掛ける。あの狐はものすごい強いのだが、チーム戦には全く向かない。早めに指示を通しておかないと、独走しかねない。
「どうなさいました土御門様」
「気配がない・・・多分、隠形(おんぎょう)や」
自らの気配を何らかの方法で消して潜む術は総称して『隠形』と呼ばれる。高等な術になると直接視認することすら妨げることもできる。敵があの大鹿島の結界を抜けられるわけがない以上、隠形術を用いてそのあたりに潜んでいると考えるのが妥当だろう。
そうなると、罠を張っている可能性が高い。
俺の警戒心が伝わったのか、瀬良も周囲を伺い、警戒態勢を取る。天狐はゆっくりと降り立ち、綾音を地面に立たせていた。
疱瘡神の気配もないところを見ると、人に戻っているのかもしれない。どんなに高度な術式であっても、神の気配を完全に消し切る隠形結界を張るのは、無理とは言わないが、時間が足りなさすぎだろう。
ただ、相手は神宝の使い手である。万が一ということも有りうる。警戒するに越したことはないな・・・。
「罠があるかもしれん・・・注意して進めやな」
俺は五芒が描かれた符を一枚取り出すと、二つ折りにして口に咥えた。そのまま青龍勧請の呪言を唱える。
「前五 青竜 木神 家在 寅主銭財 慶賀吉将」
符が輝き、青龍と化す。もちろん、ある程度の呪力がある人間にしか、その姿を見ることはできない。符から生まれた半透明の猛き龍が天に立ち昇っていく。
先ほど疱瘡神を連れた鉄研を追いかけさせたのもこの青龍だ。
今日は、青龍、大活躍やな・・・。
青龍はその性は木であり、このような森の中ではより一層力を発揮することができる。
「さあ・・・かくれんぼは・・・そっちにとって悪手やってこと教えたるわ・・・」

