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天狐あやかし秘譚
第35章 真実一路(しんじついちろ)
「・・・運命」
口から言葉が漏れた。
「あん?・・・なんだ?答えるのか?」
女が一瞬興味をそそられたかのようにこっちを見る。

「運命・・・。医者が・・・自分が万能ではないことを知って、運命を受け入れる。
 受け入れて・・・親友の死を・・・悼む・・・」

これが正解かどうか、半信半疑だった。そんな綺麗事、とも思った。
でも・・・でも・・・。

どうにも答えのない質問。それでも答えねばならないなら、これしか、答えようがない。

にやりと女は笑った。

「はっはっは!正解だ!・・・なんだ、つまらん。では、この者は置いていくぞ。もはやこの者は地獄には行かぬ。こやつがこれから行くのは・・・天だ。」

女は上を指差してみせた。

「だが、時間がないのは同じだ。こやつはすぐに旅立たねばならない。・・・おい・・・別れくらい、言ってやれ」

そう言うと女は鎖を手放した。
「まあ、正解しちまったからな、仕方ない・・・。じゃあな」
女はそう言い残すと、不思議なことにすっと闇に紛れて、姿が消えてしまった。

「ママ・・・」

環が私のもとに駆け寄ってくる。ああ・・・あの日、私が目を離した隙に交差点に飛び出して轢かれて死んでしまったのに。あの日のままの姿のあの子がいる。

「環・・・たまきぃ・・・」

会いたくて、会いたくて仕方がなかった。
頬にそっと手のひらを這わせる。そこには確かなぬくもりを感じた。
腕を回して、ぎゅっと抱きしめると、懐かしい環の匂いがした。
環も私の体に腕を回す。

言葉が溢れてきた。言いたくて、言いたくて仕方がなかった言葉。たくさん、たくさん溢れてくる。
「ごめんね・・・ごめんね・・・環・・・。
 これからいっぱい楽しいことあったのに、
 これからいっぱいできることがあったのに、
 あなたの・・・生命を奪って・・・ごめんね・・・。」

ごめんねを何度も繰り返す。何度も、何度も。
涙が溢れる。頬を伝い、ベッドにぼたぼたと落ちていった。

「ママ・・・泣かないで。私、これを渡しに来たのよ。クリスマスまでに間に合ってよかった。プレゼント・・・環が作ったの。」

それは、折り紙で作ったひとつの絵だった。
真ん中にお家がある。そこに三人の人。それを取り巻くたくさんの動物達。
お家の上には、「ありがとう」と書いてあった。
折り紙が好きだった、環らしいプレゼントだ。
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