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天狐あやかし秘譚
第18章 【第5話 木霊】隋珠和璧(ずいしゅかへき)
☆☆☆
瞬間、私の脳内にいくつものビジョンが走った。走馬灯、というのがあるなら、こういう状態なのかもしれない、と思った。

小さな苗木、私はその樹の横でうずくまっている。
太陽が降り注ぎ、大きくなる。
時間が過ぎ、私の目の前を、私の体の上を、私の腕の先を、たくさんの動物が駆け回る。

人の子が私を見上げて何かを言っている。
幼い兄弟だ。
すぐに二人は大きくなり、私の身体を登ったり、腕から飛び降りたりする。笑い顔、楽しそうな声。

季節がギュンギュンと巡る。私の身体はますます大きくなる。
夏には葉を茂らせ、秋には落葉し、冬には雪を被り春を待つ。

目の前に里が出来、大きくなり、人が増える。
狩りをする者、木の枝を拾う者、旅をする者・・・。
たくさんの人の子が私の前を通り過ぎていく。

人の子の家が大きくなる。森の木々を切りはじめ、その樹で家を作っている。
私のところにも、人の子が来た。

私を切るの?切って、人の子の家にするという。
大きな木だったからだろうか?私を切る前に、男が私に頭を下げた。

人の子の家になる、というのはなかなか新鮮な体験だった。
もう私の身体を獣が跳ね回ることもなく、人の子が私で遊ぶこともない。
それは残念なことだったが、それ以上に楽しいこともあった。

人が、いつも周囲にいた。
夫婦が集い、交わり、子を成す。
食事をし、衣服を作り、歌い、笑い、ときには喧嘩もした。

生まれた子は成長し、またつがい、交わり、子を作る。
こうしてどんどんと人の子は増え、私の周りには笑い声が絶えなかった。

『私も、混ざりたい。』

いつからか、そう思うようになった。
十分長く生きた私は、姿を人に似せることができることを知っていた。
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