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天狐あやかし秘譚
第90章 末路窮途(まつろきゅうと)
♡ーーーーー♡
【末路窮途】行き止まりの道に立たされ、みじめな末路をたどること。
追い詰められて、にっちもさっちもいかないぞ・・・、みたいな。
♡ーーーーー♡
俺の親父はクソ野郎だった。
親父、と呼んでいいかすらわからない。生物学的な父、という方がまだしっくり来る。
じゃあ、母親はどうだったか?
母はそれに輪をかけてクソだった。
もともと母の家は華族とかなんとかで、そこそこの資産があったようだが、母の祖父、俺からすれば曽祖父の代で身代を食いつぶし、没落したようだった。『母』が生まれた頃には、その日食うのも精一杯というほど赤貧に喘いでいたらしい。
そんな家に嫌気が差したのか、『母』は若い時分にそこを飛び出し、単身、上京した。だが、15〜6の女がまともな職を得られるわけもなく、体を売って稼いだ金で男の家を渡り歩くような生活をしていたらしい。そんな女だ。水商売の世界に入るのも、まあ当然だった。
そこで真面目に働いたかというとそんなことはなかった。
どこで覚えたのか知らないが、結婚詐欺のようなことを繰り返すようになった。
多分、きっかけは身の上話をした男が『結婚しよう』と言い出したことだろうと想像できる。貢がせるだけ貢がせて、手酷く振るなんてことを繰り返していた
そのうち、もっと効率のいい方法を見つけたようで、わざと既婚男性を誘惑して、身体の関係に持ち込み、散々貢がせた上、妊娠したと嘘をついて更に金を巻き上げ、挙げ句、妻に関係をしていることをわざとバラした上で『自分は妻子があることを知らされていなかった』などと騒ぎ立て、慰謝料を請求すると脅しをかけ、示談金をせしめ別れる、なんてことをしていたみたいだ。
この女に家庭をめちゃくちゃにされた男は両手の指の数では足りないほどだった。
そんな女でも『寂しい』という気持ちがあったのか、詐欺とは別口で男と関係をしていた。それが、木元康一という男・・・さっき言った俺の生物学的な『父』だ。
二人が同棲を始めてすぐ、俺が生まれた。
もちろんそんな両親だ。俺の出生届など出すわけもない。飯を食わせてもらえたのだって、奇跡みたいなものだと思っている。
こうして、俺は場末の糞溜めみたいなアパートで、戸籍もないような状態でぎりぎり生きていたってわけだ。
【末路窮途】行き止まりの道に立たされ、みじめな末路をたどること。
追い詰められて、にっちもさっちもいかないぞ・・・、みたいな。
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俺の親父はクソ野郎だった。
親父、と呼んでいいかすらわからない。生物学的な父、という方がまだしっくり来る。
じゃあ、母親はどうだったか?
母はそれに輪をかけてクソだった。
もともと母の家は華族とかなんとかで、そこそこの資産があったようだが、母の祖父、俺からすれば曽祖父の代で身代を食いつぶし、没落したようだった。『母』が生まれた頃には、その日食うのも精一杯というほど赤貧に喘いでいたらしい。
そんな家に嫌気が差したのか、『母』は若い時分にそこを飛び出し、単身、上京した。だが、15〜6の女がまともな職を得られるわけもなく、体を売って稼いだ金で男の家を渡り歩くような生活をしていたらしい。そんな女だ。水商売の世界に入るのも、まあ当然だった。
そこで真面目に働いたかというとそんなことはなかった。
どこで覚えたのか知らないが、結婚詐欺のようなことを繰り返すようになった。
多分、きっかけは身の上話をした男が『結婚しよう』と言い出したことだろうと想像できる。貢がせるだけ貢がせて、手酷く振るなんてことを繰り返していた
そのうち、もっと効率のいい方法を見つけたようで、わざと既婚男性を誘惑して、身体の関係に持ち込み、散々貢がせた上、妊娠したと嘘をついて更に金を巻き上げ、挙げ句、妻に関係をしていることをわざとバラした上で『自分は妻子があることを知らされていなかった』などと騒ぎ立て、慰謝料を請求すると脅しをかけ、示談金をせしめ別れる、なんてことをしていたみたいだ。
この女に家庭をめちゃくちゃにされた男は両手の指の数では足りないほどだった。
そんな女でも『寂しい』という気持ちがあったのか、詐欺とは別口で男と関係をしていた。それが、木元康一という男・・・さっき言った俺の生物学的な『父』だ。
二人が同棲を始めてすぐ、俺が生まれた。
もちろんそんな両親だ。俺の出生届など出すわけもない。飯を食わせてもらえたのだって、奇跡みたいなものだと思っている。
こうして、俺は場末の糞溜めみたいなアパートで、戸籍もないような状態でぎりぎり生きていたってわけだ。

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