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天狐あやかし秘譚
第89章 貪愛瞋憎(どんないしんぞう)
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【貪愛瞋憎】貪ること、執着すること、怒ること、憎むことの四つ煩悩を表す言葉。
こだわって、腹を立てて憎んで・・・それじゃあ救われないよ、みたいな。
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「こ・・・これ・・・本当に奢りで食べていいんすか!?」
田久保が、じゅるりと涎をすすらんばかりの表情で目の前の食事を見つめていた。

昼下り、仙台駅にほど近い牛タン専門店で、日暮、九条、田久保の三人はひとつのテーブルを囲んでいる。

九条と田久保の前には、この店の最高級の定食である『上撰極厚 真ん中たん定食(5枚15切れ)』が焼き立てのいい匂いを放っていた。運んできた店員によれば、牛たんの中で一番柔らかい希少部位を贅沢に厚切りにした逸品だそうだ。ちなみに、最初、日暮は『5枚15切れは多いから3枚でも・・・』と言ったのだが、二人が強硬に『5枚!』と主張したという経緯がある。

方や日暮の前には『お得!丸たん定食』が置かれていた。美味しそうは美味しそうなのだが、他の二人の前にある肉厚でジューシーな牛タンと比べると、なんだか『ぺらっ』としており、やや・・・いや、かなり見劣りがする。

いただきまーすと食べ始めるのであるが、二人が『うまい、うまい』と食べる姿を箸を咥えて羨ましそうに眺める日暮の表情には、切なさと言うか、もはや無常感にも似た風情が漂っていた。

「あー!!おいしかったあ!!」

ことりと、田久保が湯呑みを置く。途中、何度も日暮が『あ・・・』とか『ちょっとは、私にも・・・』などと言ってはいたが、それは華麗にスルーされていた。最後に出されたデザートのシャーベットを平らげ、番茶で口をさっぱりさせた二人は、いたく満足そうであった。

「お会計、3人様ご一緒でよろしいですか?・・・はい、1万3千600円となります」
にこやかな店員にいじらしく財布から小銭をちょこちょこ出しつつ日暮は料金を支払う。そんな彼女を尻目に、二人は外に出て、仙台の町並みを眺めていた。
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