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天狐あやかし秘譚
第79章 義勇任侠(ぎゆうにんきょう)
カダマシ、ダリ、双方の周囲が光りに包まれ、音が消えた。あるのはただ二人の男の持つ純粋な力と力のぶつかりあいだけだった。

カダマシが何ごとかを吠える。
それに応えダリもまた全妖力をその呪言に乗せ、歌い上げていく。

時間にすればほんの数秒の出来事だった。
力を放出するほどにそれに耐えきれず、身体を朽ち果てさせていく人間と、2000年以上に渡り、莫大な妖力を擁し永らえてきた妖狐の差が、徐々に生まれていった。力と力のせめぎあいは、カダマシがギリギリと押される結果になった。

『タケミカヅチ』となったカダマシの足が、地面にめり込み、ジリジリと大地を削りながら後ずさっていく。足に込める力とは裏腹に、彼はこの後退を止めることができないでいた。

ついに押し負け、ダリが放った光に飲まれながら、彼はなんとなく、その光景を別のところからぼんやり眺めているようなそんな気持ちになっていた。

ー死ぬんだな

そう直感する。時間が引き伸ばされたように感じられ、刹那の内にいろんな感情が、いろんな想いが湧いてきた。
不思議と、それは怖くはなかった。
なんだか数奇な運命だったけど、最期がこれなら・・・少しは満足だ

このとき、カダマシによぎった感情は意外なことに、安寧に近いそれだった。
悔しくないといえば嘘になる、しかし、強大なとても敵わないと思った敵に対して、自らの生命も顧みずに全力でぶつかったのだという自負は、彼をして『弱い自分に打ち勝った』と思わせたのかもしれない。

ダリの力が自分の体をスローモーションのように砕いていく。
ただでさえ朽ちかけている肉体の崩壊が早まっていくようだった。
しかし、彼の唇には満足げな笑みが浮かんでいた。

ーああ・・・ありがとうな

そう思った。
カダマシにはわかったのだ。ダリが、敢えて逃げなかったことを。そもそも、彼は正面からの対決を受ける必要などなかったのだ。幻術でも何でも使って、少し時間を稼げば、こちらは勝手に自滅する、それくらいわかっていただろうに。

自分の気持ちを、100%の想いをすべて受け取ってくれた。
それも、これほどまでに心が晴れやかな理由なんだろうな・・・と、カダマシは・・・雄一は感じていた。

これで、俺は消える・・・
そう、雄一が思った瞬間、ドクン、と心臓が鼓動をした。
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