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彼女はボクに発情しない
第9章 ボクと歌姫たちの三重奏
陽太はどう思うんだろう。笹本さんは可愛らしいし、おっとりしてて陽太とペースも合いそうだ。笹本さんから告白されたら、陽太は、なんて答えるのだろう?

呼吸がまた浅くなろうとしている。
いくら風香ちゃんが、陽太は私のこと大好きだ、って言ったとしても、本人から直接聞いた訳ではない。

でも・・・。心が闇に落ちそうになったが、寸でのところで、踏みとどまる。

陽太が、取られてもいいの?
ずっと、私を守ってくれた、大事な人が取られるのを、ただただ、指をくわえて見ていていいの?

私の心の中の何かが叫ぶ。

本当に、陽太に自分の気持ちを伝えないまま、何もかも終わってしまって、いいの?
本当にいいの?
奏!!

よくない・・・。よくないよ。

「次、四宮さんだよ」
大槻さんが言う。

そうだ、よくない、全然良くない。
私はバットをぐっと握りしめた。
陽太の方をちらりと見る。だいぶダメージから回復したのか、身体を起こして私の方を見ている。

ー陽太はもしかしたら、私のことを重荷に思っているかもしれないけど!

1球目。私が振ったバットは盛大に空を切った。
しまった、力みすぎた。とにかく当てなくては・・・。集中、集中・・・。

ーそれでも、私は陽太にたくさん、たくさん救われたんだ!

2球目、カツンとあまりいい音ではないが、一応は当たった。

ー私がどんなに情けない目にあっても!

3球目、カンと良い音がなる。そこそこの打球を返せた。

ー私が、どんなに、つらいときも。

4球目。やっと芯を捉えることが出来た。

ーあなたは・・・あなただけは、どんなときでも駆けつけて、笑顔で私を助けてくれた!

5球目、6球目・・・。

打ちながら視界の端で陽太を捉える。

ーだから・・・、あなたがいない世界なんて。
 ごめんなさい・・・私は、私は・・・

17球目。なんとか返せている。

ー考えることすら、出来ないの!

18球目。ギリギリの当たりだが、なんとか返せた。
あと・・・2球。お願い、神様・・・。
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