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カクテルバー 『cross×』
第2章 ドライ・マティーニ♪
ソルティードッグを飲み干した頃に、携帯がなった。
私は席を外してお店の外に出た。


あなたからの…暫く振りの電話だった


高鳴る気持ちを押さえてボタンを押した。


〝(元気か…コウ。ゴメンな電話も儘ならないな)


弱気な声に、私の心が痛んだー

〝(元気じゃないよ。ほおって置かれて…!
あなたが私を元気にしてよ…逢いたくて仕方がないわ…)


言うまいと決めてた言葉が口をつく…


〝(ごめん…俺も今、参ってる… 仕事が上手く進んでなくて。いつ帰れるか判らない…コウを一人にしてるのも辛いよ…)


疲れ果てた覇気のない声に、また私の心が痛みをました


〝(今日は出会った記念日なのに…そんな弱音吐かないでよ… )

あなたの心の痛みが判るからこそ、私が重荷になっていることが苦しかった。


〝(解ってる…コウがいるから頑張れるんだけど…寂しがる姿を思うと… 辛くて電話も出来ない)


途切れながら話すあなたの声が、心を縛る――


少しの沈黙の後、私は心を決め、涙を拭いて顔を上げた。


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