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きのうの夜は
第9章 加仁湯
吉村は本当に私の事が好きだったのだろう。
だから、別れたくなかったし誰にも渡したくなかったのだ。
でも、私の気持ちは徐々にではあるが冷めて行った。
私は抱きかかえられながら湯に黙って浸かっていた。
「彩夏、お前、俺の事嫌いなのか?」
それを聞かれるととても困ってしまう。
「別に、嫌いじゃないわ…」
確かに嫌いではなかったが、強いて好きだとも思っていなかった。
私たちは暫く景色を見ながら露天風呂を愉しんだ。
吉村と一緒に露天風呂に入るのは別に苦にはならなかった。
ただ、セックスがイヤだったのだ。
「もう、のぼせちゃうから出ましょうよ…」
「そうだな…」
私たちはお湯から上がると服に着替えた。
そして、また加仁湯へと戻って行ったのだ。
加仁湯に着くと部屋の用意が出来ていると言われたのでチェックインすることにした。
その部屋はとても綺麗で広かった。
二部屋あって、一部屋にはすでに布団が敷いてあった。
その布団を見ると吉村はニヤリと笑うのだった。
私は、また早々に浴衣に着替えた。
ジーンズだと苦しかったからだ。
時計を見ると11時を回った頃だった。
お昼はどうしようかというそんな話になった。

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