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絶対に許さないからね
第5章 自分だけの世界
母と交わした会話は結局それだけだった。
法要の最中はもちろん話などできないし、
その後のお斎に、母は疲労を理由に出席しなかった。
仲良くおしゃべりするつもりなんかなかったけど、
先に身を引かれると、
わたしが意地悪をしたようで後味が悪い。
わたしとはともかく、
初孫となる詩子とは話をしたかっただろうな、
と少し母をかわいそうに思ってしまって、
慌てて頭を振って考えることをやめた。
兄に駅まで送ってもらい、
帰りの電車の中、詩子はもう機嫌を直していて、
わたしの隣に、ぴったりと太ももがくっつくくらいのところに座りにきた。
オーロ大きかったねぇ、
とすでに懐かしそうな顔をして言う。
最初は怖がっていたオーロとはすっかりと仲良しになり、
帰る間際には後ろから抱き締めて、
頭のてっぺんに別れのキスをするほどになっていた。
オーロの方も詩子を気に入ったらしく、
靴を履こうとしている詩子のジーンズの裾を咥えて引っ張って、
わたしたちを困らせた。
引き離されて、犬ながらに泣きそうな顔をしているのが可笑しくて、
それがまたかわいかった。

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