この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
絶対に許さないからね
第1章 暗い水辺
濃く深い闇の中で気がついて、
ああまただ、とわたしは思う。
墨汁をぶちまけたような、黒一色の世界。
ひとりぼっちの心細さ、
右も左もわからない。
闇の中からなにかがわたしを、
じっと見ている気配がする。
静かにしていると、
その気配は少しずつ濃くなってくる。
今にも手が伸びてきて、
水の中に引きずり込まれそう。
それでようやく自分の立つすぐ前が、
底の知れない深い淵だと思い出す。
背中を冷たい汗が滑り落ちていく。
夢を見ているのだとわかっているのに、
淵の水のリアルな冷たさに背筋が凍る。
逃げ出したくても、足を踏み出すその先に、
地面があるのかどうかもわからない。
目が覚めても目を閉じたまま、
わたしはじっと動かないでいる。
不快な寝汗、喉の乾き。
わたしはまだ、ちゃんと現実に戻ってこれていない。
嫌な夢。
足の裏に、じっとりと濡れた地面の感触が、
冷たくくっきりと残っている。
左手を伸ばしても、そこに温かい気配はない。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


