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千一夜
第40章 第七夜 訪問者 影
「ふふふ」
「咲子さん、もう勘弁してください」
「ごめんなさい。でも、どうしても負けたときの長谷川さんの顔が浮かんじゃうんです」
「そんなに間抜けな顔をしてましたか?」
「いいえ、あのときの長谷川さんの顔を一言で言うと、だめだめ一言では言えないわ。ふふふ」
「参りました。咲子さん本当に勘弁してください」
 シングルプレイヤーにスクラッチで戦いを挑んだ私が悪い。が、私は咲子がシングルだなんて知らなかった。市長たちとプレーしたとき、力を抜いていたのは私だけではなかった。
 ドライバーの飛距離も五十ヤードくらい咲子は私より飛ばした。アプローチも上手く、パットでは完璧にパターラインの芝目を読んで力むことなくボールをカップに沈めた。
 一枚も二枚も、いや何十枚も咲子のゴルフは私より上だった。
 札幌に向かう飛行機の中で、咲子はこう告白した。
「結婚に失敗した後、自分と向き合いたくなかったのでゴルフをしたの。面白くはなかったけど、死に物狂いでクラブを握って振っていたわ。あのときの私は負けを受け入れる余裕がなかったの。父のお陰で有名なツアープロにも教えてもらったし、そこそこ力のあるプレーヤーとコースを回ることもできたわ。そこで私はたっぷり鍛えられたわけ。信じてもらえないかもしれないけど、三百六十五日、休みなしでゴルフをしたわ。プロに挑戦してみようと一度は思ったけど、私には無理。長谷川さんはケビンコスナーのティンカップと言う映画を御存じ? 私、ケビンコスナーのプレーよりも彼が緑のコースと調和しているところに感動したの。変かしら? ふふふ」
「ケビンコスナーならフィールド・オブ・ドリームスだな」
「ふふふ、長谷川さん、負けず嫌いでしょ?」
「否定はしません」
 その後、私と咲子は笑った。残念ながら(私にとって)二人が笑って終わり……ではなかった。
 もちろん咲子は私の負けをいじって私を貶めようとしているわけではない。グリーンで帽子を取り「負けました」と言ったときの私の顔が、彼女のつぼにはまったのだ。
 この先私と咲子がどういう運命を辿るのかはわからない。だが、はっきり言えることが一つだけある。
 遠山咲子は生涯私の顔を(間抜け顔?)忘れることはない。
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