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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第29章 安祐美 27歳
街灯の少ない県道を私たちは肩を並べて歩きました。
道中、私が夫と別居するためにこっちに帰ってきたと話すと
「ええっ?!安祐美ちゃんみたいな美人を妻にしておきながら不倫するとはバカな奴だねえ」と
あくまでも夫に非があると言ってくれて
少しは溜飲が下がりました。
車が私たちを追い抜く時に
「危ないよ」と私の肩を抱いて引き寄せてもらった時はなぜだかドキドキして頬を染めてしまいました。
「ねえ、洋平は結婚したの?」
「結婚?するわけねえよ
だって、俺まだ27歳だぜ」
「じゃあ…誰かお付き合いしている女性はいるの?」
「いないよ、俺、イケメンなのにモテないんだ」
「自分でイケメンって言っちゃうわけ?」
クスクス笑いながらも
洋平がフリーだとわかって、ますますドキドキしちゃいました。
暗い夜道を背後から来た車のヘッドライトが照らしてゆきます。
「危ないからさ、もっとこっちに寄りなよ」
肩を抱かれて引き寄せられると
私は自ら洋平の首に腕を回して唇を奪いました。
「うわっ!…っと…安祐美ちゃん?」
「私、洋平となら…いいよ…」
「え、えっと…いいって?」
彼女がいないというのも頷けました。
洋平ったら鈍いんです。
女から誘いをかけているのに!!

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