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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第9章 文水の事情
しかし、駅舎の中に入り、券売機で帰りの切符を購入しようとした時のこと。
「帰りは自由席でいいよね」
「えっと、それなんだけど、さ……」
「どうしたの? やっぱりグリーン席の方が――」
「じゃなくて。私……戻らないから」
「戻らない?」
「あ、明日ね。理樹と会うことにしたんだけど」
「あ、そうなんだ。じゃあ、今夜はこの辺りのホテルに?」
「そう、かな?」
そう言って、高坂さんはやや目を泳がせている。
「今日は別荘に戻って、明日改めて来たっていいんじゃない? 宿泊代の方が高くつくかもしれないし。夏揮さんには事情を言って、朝駅まで送っていくからさ」
「管理人さん」
「!」
思わずはっとしたのは、突如として真っすぐに見据えられていたから。
高坂さんは迷いを振り払うように、こう言うのだった。
「私、もう別荘には戻らないよ」
「え……?」
「もう、決めた。私の旅行は、これでおしまい」
「ちょ、ちょっと待って! どうして、急に?」
「うーん……つまり、やりたいことができたから、かな?」
「やりたいこと?」
「そう」

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