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駆け込んだのはラブホテル
第10章 心変わり



 桜木が髪を乾かし終わる。
差し出されたドライヤーを守屋も受け取り、桜木の百センチ左に座って、軽く髪を乾かした。
桜木の長くふわふわな髪と違って、三分で乾いた。



 さて。

 緊張していた。



 これから行うことについてではなく、これから、桜木にどう声を掛けるかについて、守屋はシャワーを浴びながらもずっと考えていて、そして、切り出した。

「桜木さん」

 結局こういう部屋に泊まることになった。ああ、今夜卒業するんだなと、守屋はこの部屋に着くまで思っていた。
桜木も、そのつもりだっただろう。

けれど、



「今日は、やめませんか」



 ベッドに隣あって腰掛けているため、桜木の表情を窺うには視線を横に向けなければいけなかったが、その勇気は、守屋にはなかった。
正面を向いて、俯いていた。

 桜木が何も言わないので、守屋は続けた。



「僕は、桜木さんに、もっと自分を大切にしてもらいたいと思います」

「私が、自分を大切にしていないように見えましたか」

「まあ……」

「どうして」



 守屋は自分の心を落ち着けるため、鋭く長く息を吐く。そして、考えて考えて、言う。



「……誰でもいいと言うのは、桜木さんにはまだ早いと思います」


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