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女優なんて…
第15章 女優デビュー
「私たちは、この楽屋に陣中見舞いをしに来たわけではないのだよ」
ここに訪ねてきた本来の意味を大白川監督は口にし始めた。
「もしかして、お芝居のダメ出しとか?…」
「いいや、その真逆さ
君をスカウトにしに来た」
そこへ劇団主宰の近藤が楽屋へ走り込んできた。
大白川監督と女優の涼風あかねが
楽屋に来ているという情報を聞き付けて
急いで楽屋にやってきたが
ドアの外から優美子をスカウトに来たと聞いて
慌てて中に飛び込んできたのだ。
「これはこれは、大白川監督ではないですか
そちらの美しい女性は涼風あかねさんですよね?
お二人がお越しに見えられて光栄ですが
うちの優美子をスカウトするという言葉を聞いて
これは穏やかではないとノックもせずに部屋に来てしまいました」
大事なスターの原石を横取りされてたまるものかと
近藤は失礼を承知で大白川監督に向かって睨みをきかせた。
「君は?」
挨拶もなしに一気に捲し立てる近藤に
無礼なやつだとばかりに
こちらも負けじと大白川監督は睨み返した。
「失礼しました
私は、この劇団を主宰しております近藤と申します」
近藤は背広の内ポケットに手を突っ込んで
名刺入れを取り出すと、素早く一枚を抜き取って大白川監督に差し出した。

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