この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
全部、夏のせい
第9章 愛別離苦

フランス経由で現地入りしたアラムとは、
殆ど連絡が付かなかった。
ついて行けば良かったと、
何度も思ったけど、
まだ2歳にも満たないアダムを連れて行くのは難しい。
とにかく、留守を守って、
アダムをしっかり育てることだけに集中しようと思った。
本当にごく稀に、電話があった。
衛星電話を使っての通話だそうで、
そんなに使える訳ではないらしかったけど、
声が聴けるだけでも嬉しくて、
毎回泣いてしまった。
アダムはまだ、お話は殆ど出来なかったけど、
片言のフランス語で、
「パパ?」と呼び掛けては、
一生懸命、何かを話していた。
アラムの不在の夏を迎えようとしていたある日の夜、
本当に久し振りに衛星電話で着信があった。
祖母とアダムに、
「パパからよ?」と言って、
通話ボタンを押すと、
知らない男性の声が聴こえた。
訛りの強いフランス語で、聴き取り難い。
とても嫌な予感に悪寒が走って、
電話を落としそうになる。
慌てて握り直して、
ゆっくり大きな声で、
「もう一度、お願いします」と言うと、
やっぱり、同じことを繰り返された。
ご主人が連れ去られて行方不明になりました。
状況が判り次第、また、連絡します。
雑音がして、電話は切れてしまったけど、
握った電話を離すことが出来ずに固まっていた。
「真麻ちゃん?
どうしたの?」と、祖母がゆっくりした声で話掛ける。
私は震える声で、
「アラムが…行方不明になったと…」と言いながら、
座り込んでしまった。
何も判らないアダムは、
私の膝に乗って、
首に腕を回して頬にキスをすると、
「パパは?」と言った。
私は涙を堪えながら、
「電話が切れちゃったの」と言った。
そして、祖母に、
「フランスの事務所に、電話してみますね。
アダム、グランマと今夜は寝てくれる?」と言うと、
「良いよ」と言って、
祖母と手を繋いで、
「おやすみ。ママン」と、
もう一度、頬にキスをしてくれた。
私は書斎に入って、
深呼吸をしてから、
フランスの事務所の連絡先を確認して、
電話をした。
殆ど連絡が付かなかった。
ついて行けば良かったと、
何度も思ったけど、
まだ2歳にも満たないアダムを連れて行くのは難しい。
とにかく、留守を守って、
アダムをしっかり育てることだけに集中しようと思った。
本当にごく稀に、電話があった。
衛星電話を使っての通話だそうで、
そんなに使える訳ではないらしかったけど、
声が聴けるだけでも嬉しくて、
毎回泣いてしまった。
アダムはまだ、お話は殆ど出来なかったけど、
片言のフランス語で、
「パパ?」と呼び掛けては、
一生懸命、何かを話していた。
アラムの不在の夏を迎えようとしていたある日の夜、
本当に久し振りに衛星電話で着信があった。
祖母とアダムに、
「パパからよ?」と言って、
通話ボタンを押すと、
知らない男性の声が聴こえた。
訛りの強いフランス語で、聴き取り難い。
とても嫌な予感に悪寒が走って、
電話を落としそうになる。
慌てて握り直して、
ゆっくり大きな声で、
「もう一度、お願いします」と言うと、
やっぱり、同じことを繰り返された。
ご主人が連れ去られて行方不明になりました。
状況が判り次第、また、連絡します。
雑音がして、電話は切れてしまったけど、
握った電話を離すことが出来ずに固まっていた。
「真麻ちゃん?
どうしたの?」と、祖母がゆっくりした声で話掛ける。
私は震える声で、
「アラムが…行方不明になったと…」と言いながら、
座り込んでしまった。
何も判らないアダムは、
私の膝に乗って、
首に腕を回して頬にキスをすると、
「パパは?」と言った。
私は涙を堪えながら、
「電話が切れちゃったの」と言った。
そして、祖母に、
「フランスの事務所に、電話してみますね。
アダム、グランマと今夜は寝てくれる?」と言うと、
「良いよ」と言って、
祖母と手を繋いで、
「おやすみ。ママン」と、
もう一度、頬にキスをしてくれた。
私は書斎に入って、
深呼吸をしてから、
フランスの事務所の連絡先を確認して、
電話をした。

